偶然なのか必然か
「そろそろ時間だから行くわ。」
『そっか、帰り気をつけてね。』
「うん。本当に苦痛だよ。隣がキモいおじさんだったらどうしよ...。」
『大丈夫だって!また今度ゆっくり会おうね。』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
遡ること1ヶ月半
関恋工の方々に会うためだけに関西へ行くことを決めた。
5月某日
大阪に着いた僕は、これから始まる3日間がまさかあんなことになるなんて知る由もなかった。
初日は数声掛けでしれっとハーフ子を即。翌朝、ごはんを一緒に食べて駅まで見送り、再開を約束したところでバイバイ。
2日目は関恋工の方々との会合。ナンパ自体で緊張する事はないのだけれども、同士との顔合わせはいつもいい意味で緊張する。
打ち解ける早さが異常なのは、皆さんのコミュ力の高さ故なのか、それとも同じ方向を向いているからなのかは分からないが、初対面とは思えない盛り上がりで、そのあとに僕達がする事といえばひとつだけ。
じゃあ、移動しますか。という事でスタンディングバーへ移動。
まだ時間が早いこともあり、店内は空いていたので地蔵トークで盛り上がっていたところ、近くにいらしていたTKOメンバーで尊いのナオキさん合流。
6ヶ月ぶりの再会にガッチリと握手を交わした。
「よっしゃ、ウィードさんあの子達をナンパしに行きましょう。」
てな具合でコンビナンパをする事になり、美女2人組へ即声掛け。
オープンするも塩対応。
いや、これは塩対応を通り越してカラシだ。
普段の僕ならすぐに諦めていただろうが今はナオキさんと一緒だ。
今回は粘ろう。
そこから担当別にどうにか和み、僕は担当の巻き髪子へ価値観トーク、恋愛トークを展開。
時間を気にする様子も無いのでエアビーで飲み直すように仕掛けるが、終電で帰るというのを崩せず、駅まで送るついでにバンゲして解散。
何もできなかったのがとても悔しかったが、気を取り直してストナンするもこれといった事もなく大阪最後の夜は終わりを迎えた。
最終日
チェックアウト済ませ、駅まで向かう途中で携帯が鳴った。
連絡の相手は食い付きメーター振り切り顔刺しを得意とするタダオさんからだった。
電話することになり、近況報告などをしているついでに、昨日の巻き髪子がどれだけ自分のタイプだったかを話し、もう一回会いたいけど無理だろうなと伝えると「ダメ元でアポ打診してみたら?」と言われたのである。
なぜだか、タダオさんに言われるまで打診をするという行動が毛頭にもなかった。
自ら行動をしなければ何も始まらないとツイートしておきながらこのざまだ。完璧にAFCであり、ネット弁慶である。
友達と出掛けると言っていた巻き髪子へキモいおじさんメールを送り付けたいのをぐっと堪えて『大阪を離れる前に少しでも会いたい』とだけ送ると、まもなくして巻き髪子から着信があった。
「久しぶりに会えた友達と一緒だし、明日も早いから今日は会えないよ。」
『大切な友達との久しぶりの時間だってことは分かってる。でも、僕は今日東京に帰っちゃうし、次いつ大阪に来れるか分からない。だから今日は僕に時間を割いて欲しい。』
「んー・・・ ちょっと待って、友達に聞いてからまた連絡するね。」
その後、連絡があり会えることになった。もう会えないと思っていた人に会える事がとても嬉しかったが、新幹線の終電を考えると会えるのは2時間ほどしかない。
直ホテルか...
それとも真剣に口説くか...
僕は悩んでいた。
直ホテルをした事もないし、今まで真剣に口説いた事もない。
いつも薄っぺらい適当な話をして所謂”仕上げる”ってことをした事が殆ど無なかったのだ。
考えても仕方ない。なるようになるだろう...
それより約束の時間まで何をしてようか...
時間を持て余していた僕はストナンをしていたが、全く上手くいかなかったので近くのバーで飲みながら待つことにした。
ハイボール2杯目が飲み終わる頃に彼女が来た。
隣に座る彼女を見つめながら僕は、今の素直な気持ちを伝えた。
使い古されたルーティーンは使いたくなかった。
真剣な表情で受け止めてくれる巻き髪子。
どうして会いに来てくれたのか聞いてみると、友達に説得されたらしい。
「私とはいつでも会えるんだからその人に会いに行きなよ」と言われ、行動に移してくれたのだ。
そして僕は、ひとつひとつを確かめるように会話を進めていき、最後にこう伝えた。
『僕と会ってまだ数時間しか経ってないし、心の準備ができてないのは分かっている。だけど、今夜は僕のために時間を使って欲しいんだ。』
それに対し、静かに頷く巻き髪子
バーを後にしてホテルへ入ろうとすると頑なに拒まれる。
えっ...?
形式グダでないのはすぐに分かった。
ホテルに入るのを諦めた僕は、終電までのあいだゆっくりと話すことにした。
その中で巻き髪子が東京に来ると言ってくれ、東京でのアポが決まったのだ。
そうは言っても本当に来るとは思っていなかったし、いつものお決まりパターンでもう会うことはないだろうと思っていた。
それから僕の予想とは裏腹に、連絡が途切れることもなく約束の日が来た。
しかし、この日に限って続いていた連絡がピタリと来なかったのだ。
やっぱりそうだよな。
数時間しか一緒に居なかった男の為にわざわざ東京まで来るはずが無いと思っていたし、僕が逆の立場なら行かないと思う。
これが現実だ。
そんな時に、携帯が震えた。
巻き髪子からのLINEだ。
「今新幹線に乗ったんだけど駅まで迎えに来てもらっていい?」
来るとは言っていたがまさか本当に来るとは...
『分かった。後でね。』
口元が緩んでくるのを必死に堪えているのがとてもおかしかった。
「んー。着いたけど出口が分からへんねん。こっちで合ってる?」
『大丈夫。合ってるよ。』
間も無くして僕の前に現れた巻き髪子は相変わらず話し掛けずらいオーラを纏い歩いてきた。
黒いスキニーに綺麗な巻き髪が遠くからでもすぐに彼女だと分かった。
僕はミリオンダラースマイルで出迎えた。
『来てくれてありがとう。』
「ええよ。」
『再開のハグは?』
「やらん。」
相変わらず塩対応だな。
LINEだと素直なのに...
『一生忘れられない最高のおもてなしをするから楽しみにしといてね。』
「ほんまか?笑」
『ほんまやで。 』
ウィードタウンを案内し、夜景の見えるホテルで準々即。
翌日は午前中から東京を案内し、彼女が喜んでくれる度に僕の心は満たされていった。
『もうそろそろ時間じゃない?』
「うーん。次の新幹線にする!」
『まだ一緒に居たいのか?笑』
「うるさい!笑」
『カフェでも行こうか。』
「そうだね。」
いくら喋っても喋り足りなかった。
「そろそろ時間だから行くわ。」
『そっか、帰り気をつけてね。』
「うん。本当に苦痛だよ。隣がキモいおじさんだったらどうしよ...。」
『大丈夫だって!また今度ゆっくり会おうね。』
「絶対に約束だよ?」
『絶対にな。笑』
関恋工の方々がスタンディングバーに連れていってくれなければ出逢えなかったし、ナオキさんとナンパし、タダオさんと電話しなければ起きなかった事だろう。皆さんには感謝しかない。
そして、わざわざ東京まで来てくれた巻き髪子のおかげで僕は大切なモノを思い出せた。
この出会いは偶然ではなく必然だったのだろう。
蝉が鳴き始める頃、東京で巻き髪子と再開できる事を楽しみにしている。